無題




「ミーア一緒に行こう!」


 強い眼差し、まっすぐに差し出された手、そして何より『自分』の名を呼ぶ声。

「ダメ、いけないわ」

 たくさんのものが頭をよぎる。

 ラクス・クラインを演じる私と、ミーア・キャンベルだった私。
 どれだけの格差があるだろうか?
 ミーアとしての自分を受け入れることは、昔の自分に戻ることと同じだとミーアは思った。
 それはとても恐ろしいように見えた。

「ミーア!」

 もう一度力強く呼ぶ声。
 その声に引かれて体が動きそうに成る衝動を私は必死に抑える。

「いいの、私はラクス・クラインだものっ…!」

 ミーアの拒絶の言葉を受けて、アスランはちっと舌打ちをしてミーアに背を向ける。
 追いかけたいのに、追いかけることが出来なくてミーアは座り込んでしまった。

 自分を呼ぶ声と雨の音だけが頭の中を響いた。



 たとえ私としてじゃなくても、必要とされたことは嬉しかった。
 私でも何か役に立てることが嬉しかった。
 何よりも、憧れていたアスランの近くに居られたことが嬉しかった。

 ただ、それだけだったはずなのに……。


 雨に紛れて、涙がミーアの頬を伝った。



END

BACK

アスミア書いてみてしまいました。
というか、ミーア→アスランですね。しかも中途半端な。(自滅)
たまにはキララク以外も!と思って書きました。