強さ
「あなたは私を撃ちますか―?」
ラクスの目の前には銃を構えた少年がいた。
そして、シン・アスカの瞳から視線を外さずラクスは硝子のような鋭さで言い放った。
銃を向けられている怯えなど一切感じられないその瞳に、シンは怯んだ。
その瞬間、パァン!という銃声が響く。
「何ぃっ!?」
シンの手に握られていた銃は銃声がしたとともに吹き飛ばされていた。
シンは反射的に銃声の方向を向くと、そこには銃を構えた男が居た。
「まぁ、キラ。来てくださったのですね」
ラクスの顔にふんわりと笑顔が広がる。
「ラクス、危ないよ……」
キラは大きなため息をつき、そして銃をゆっくりと下に下ろした。
「お前が……キラ・ヤマト……」
ラクスの呼んだその名前をシンはしっかりと聴いていた。
その名前は憎むべき存在。
大切な妹を奪った、決して許すことの出来ない存在。
シンの瞳には憎悪が満ちていた。そんな瞳でキラを見据えた。
「そう、僕がキラ・ヤマト。初めまして……そういう感じではないみたいだね」
キラは自分に向けられるその瞳の憎悪に気がついて表情を曇らせた。
「あなたは、キラを撃ちますか―?」
先ほどと少し変わったラクスの問いかけ。
大きく変わったのはラクスの視線。
まるで射抜かれてしまうのではないかと、思うような鋭い視線。
逆に声色は落ち着いているからこそ、その鋭さを増していた。
「…決まってるじゃないか」
それは迷いの無い、瞳。
まっすぐと向けられる、怒りの瞳。
イエス、と言わなくてもその目がすべてを語っている。いや、その質問の後のシンの纏う空気すらもピリピリとしていた。
「……あなたに、キラが撃てると思っていらっしゃるのですか―?」
シンはその問いの真意がわからなかった。
「撃てる」
「……奪うだけの力。なら、あなたはキラには叶わないでしょう……」
ラクスは悲しそうに微笑みを浮かべる。
いつのまにかラクスの傍にはキラが居て、そしてその肩を優しくしっかりと抱きとめているのがシンには見えた。
「……うばう?……奪ったのはお前らだろう!!」
あざ笑うようにその唇を歪ませながら、シンは小さな声で呟いた後、力いっぱい叫んだ。
それを受けてラクスもキラもお互いに視線を合わせ見詰め合う。
お互いの眼差しの先に広がるたくさんの悲しみが、二人を襲う。普段は何事もなかったようにしていても、傷は癒えない。
奪ったもの、守れなかったもの―。
たくさんの笑顔、小さな温もり。
それらをすべて受け入れるように、二人はゆっくりと瞬きをする。
キラはゆっくりと息を吸い込んだ。
「そう…僕はたくさんのモノを奪った…。奪ってきた……」
キラはどこか遠くを見つめながら、言葉をかみ締めるようにゆっくりと話す。
「けれど、僕は君には負けない。僕がコーディネイターだからとかそういうんじゃなくて、僕は君には負けない。僕には負けてはいけない理由がある、守りたい人たちが居る。失わないために……」
たくさんの悲しみを見つめてきたその瞳は少しも翳ることなくしっかりとした意思を宿す紫の瞳が、まっすぐに若い少年を見据えた。
シンは負けじと、きっと睨み返す。それすらも、キラは受け入れる。
ラクスは二人のやり取りを見ながら哀しげにキラの顔を覗き込む。
「ラクス、行こう」
「ええ、行きましょう」
二人は敵であるはずのシンに無防備に背中を向ける。
「待て!逃げるのか?」
シンの問いに二人は振り返り、なんとも言えない視線を向ける。
何も話さず、その視線だけを残して二人はシンの前からいなくなった。
あとがきという名の言い訳
また、捏造してます(笑)
キララクなのか、違うのかわかりません。
ってか、これ大丈夫ですか?キララクと言い切って良いでしょうか??
皆様のご判断を仰ぎたいです…。
どうやってシンとキララクが絡むのか。。。
…キラとシンが戦うことになったとしても、迷いなく私はキラに共感するでしょう。