冬の空に、天使の羽が舞い降りる。

 キラは空を仰ぎ、その羽に触れようと手を伸ばす。
 しかしキラの手に触れると同時に、その熱にそれは直ぐに消えてなくなる。
 キラは無意識のうちに溜息を漏らす。

「キラ、寒くありませんか……?」

 そっとラクスがキラの首にマフラーを巻く。
 突然現れた人物にキラは目を見開く。

「これは……?」

「…メリークリスマスですわ、キラ」

 ふんわりとラクスは微笑を浮かべる。

「ですが、編物なんて初めてしましたので…ところどころおかしいので、あまりじっくり見ないでくださいね」

 手にとってマフラーを見ているキラに、ラクスははにかむ。
 そんなラクスの笑みを見て、キラの表情も和らぐ。

「何か隠れてやってるな、と思っていたんだけど…これを編んでいたんだね」

 ラクスがこそこそしているのことはキラは知っていた。しかしそれをラクスに聴きに行こうとすると子供達に上手く邪魔をされて結局聞けず、そのうちラクスにも何か考えがあるんだろうとすっかりと意識からなくなっていたのだ。

「すごくシンプルなものしか出来なくて……色も普通ですし、気に入らなかったら捨ててしまっても良いですから」

 ラクスはキラが何も言わないのが不安で、視線を泳がせる。

「捨てるだなんて、出来るわけ無いじゃないか。ありがとう、すごく嬉しいよ」

 キラは満面の笑みをラクスに向ける。
 そして、ゆっくりとラクスを自分の方へ引き寄せ抱きしめる。

「すごく気に入ったよ。今まで生きてきて、こんなに素敵なものを貰ったのは初めてだよ」

 ありがとう、ともう一度告げてラクスを抱きしめる力を少し強めた。
 ラクスはキラの腕の温かさ、そして温もりから伝わってくるキラの思いが嬉しくて涙を流す。

「ごめんね、僕なんて何も考えてなかったよ…」

 キラの声があまりにも哀しそうだったので、ラクスは直ぐに顔をあげてキラに微笑む。


「いいえ、わたくしはあなたのそばに居られるだけで……しあわせですわ」


 そう言い終えると、同時にラクスはキラの腕から自分の腕を引き抜き、キラの首に手を回す。
 そして少しの間もおかずにキラの唇に自らのそれを重ねる。
 触れた唇から、ラクスの体温が、想いが伝わる。

 キラは思わぬラクスの行動に驚き、目を少し瞠る。
 しかしそれは一瞬で、直ぐに笑みを浮かべてラクスの行為に応える。




「ぼくのおもいを、きみにあげるから―」




 いつのまにか強くなっていた雪に、体が冷えないようにラクスを包み込むと空を見上げてキラは呟いた。





「10年後も一緒に過ごそうね」


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