AAの出発前、お互いに言ったわけではないのに気がついたら二人きりでAAの一室へと来ていた。
 それは以前キラが自室として与えられたところだった。

「AAで、キラに初めて会ったのですね」

 ラクスは部屋をきょろきょろと見回し、どこか懐かしむように瞳を揺らしながら言った。
「そうだね。あの日のことは今でも忘れていないよ」
 キラも懐かしそうに瞳を細める。

「あれから、たくさんのことがあったね」
「ええ、そうですわね」

 ラクスはキラの肩にもたれかかるように頭をそっと乗せる。キラもそれに応え、二人は寄り添いあい、過ぎし日に思いを馳せる。


「……君に出会えて、本当に良かった」

 心からの、言葉。
 優しさ、愛しさの込められた声で発せられたそれは、ラクスの心にゆっくりと響いた。

「わたくしも、キラに出逢えて嬉しいですわ」

 そう告げるラクスの表情は自然と優しいものへと変わる。


「こういった機会で、わたくしがこの艦のクルーになるとは思いませんでしたわ」


 苦笑いを浮かべたラクスの心情は複雑だった。

 戦いつかれ、傷ついたキラにもう一度フリーダムに乗らざるを得ない状況を作ってしまった自分、そして好きな人への思いを断ち切ってまで国のために嫁ぐといったカガリのことを思うと自然と眉間に皺がよる。


「ぼくが、守るよ。この艦も、君も……」


 キラはゆっくりとラクスの腰に手をまわす。二人の距離は寄り縮まり、お互いの呼吸を感じられるほどに近づいた。

「あまり気負わないでくださいね」

 泣かないと決めたと、切ない表情を浮かべたこともある大切な人にラクスはいたわりの気持ちを忘れなかった。
 あんな表情はして欲しくない。
 自分の前だけでも、『キラ・ヤマト』でいられますようにと、祈りを込めた。

「辛かったら、仰ってください」

 ラクスはキラの肩からゆっくりと顔をあげ、真剣な声で凛と告げる。
 キラはそれに惹かれるようにラクスの顔を正面から見つめる。視線を受けたラクスは言葉も無く微笑むと、両手を広げてキラへと向き直る。

 ラクスの言わんとしていることを直ぐに察し、キラは瑠璃色の瞳を揺らしてそっとラクスを抱きしめた。

「ありがとう」

 キラは一瞬だけ体をラクスから離したと思うと、そっとラクスの唇を奪ってもう一度強く抱きしめた。
 ラクスは頬を朱く染めつつも、キラにしっかりと応えるためにキラの背中に手を回す。そしてキラの耳元でそっと囁いて、二人で顔を見合わせて、また口づけを交わした。
 

END

BACK

後書きという名の…
はい!14話あたりのお話を捏造。
ラクスが呟いた言葉は、ご想像にお任せいたします♪
キラとラクスに幸あれ…。
(2005.1.16)