未来への剣
 目の前に広がる満開の桜。
 ラクスはその眩しさに目を細める。
 そして、光の先には見慣れた後姿が見えた。

「キラ…!」

 消え入りそうなその後姿においつこうとラクスは足を速める。
 しかしl距離は縮まない。
 何度呼んでも、彼は振り返らない。


「キラ、キラ」

 焦りは不安へと色を変え、ラクスを包む。



 手を伸ばしても、届かない。



「キラ」



 祈るように叫ぶ。



 それでも振り返らないキラ。

 そして、光がキラを包むのが見える。



「だめ、行かないで…」



 ぐにゃりと世界が歪む。
 ラクスは驚き目を瞑る。





 次に瞼を開くと、そこはエターナルの中だった。
 モニターに映った機影にラクスは目を瞠る。


「フリーダム……」


 それはラクスが彼に渡した『剣』。
 彼の心にふさわしいその名前。自由を意味する剣。

 エターナルに警報が鳴り響く。

「何事ですか?」

 ラクスは冷静を装いながら、尋ねた。

「何かが近づいてきます。これは…!?」

 その瞬間ラクスの目の前を覆い尽くしたのは真っ白な光。
 その光には、見覚えがあった。
 悪寒が走る。
 真っ白な光が見える前に見えた、あの後姿は……フリーダム―キラ―。
 爆発音が、そして爆発によりエターナルは揺れた。

「キラっ……」

 息が出来ない。
 声が出ない。
 指示を出さなくては、確かめなくては…。
 しかし、頭は動かない。
 動けない。

「……っ」

 ラクスは声にならない声で大切な名を呼んだ。
 すがるように手を伸ばして。
 届かないと知っていながらも、伸ばさずにはいられなかった。



 その瞬間、暗闇が広がった。

「…ス……ラクス?」
 優しい声が聞こえて、ラクスはゆっくりと瞳を開く。
 眩しい光と共に目に飛び込んできたのは、とてもとても愛しいその姿。
 キラ、と名前を呼ぶより早くラクスは手を伸ばして、手繰り寄せるようにキラへと体を寄せる。
 腕はしっかりとキラの背中に回される。
「ラクス?」
 キラはあまりにも突然で何があったのかを理解するのに時間がかかった。
 それでも優しくラクスを抱き寄せて、ゆっくり抱き起こした。


「ラクス」


 耳元でそっと名前を囁く。
 ラクスの体は小刻みに震えていた。それは寒いからではないことをキラは直ぐに察した。
 ラクスは涙を流していた。



「キラ……いかないで……」



 自分でそういいながら、ラクスはそれが弱音だと思った。
 それでも、言葉は止められなかった。


 キラは表情を曇らせると、答える代わりに慈しむようにラクスの頭を撫でる。



「一緒に生きる未来に、導くと…僕は約束したよ?」



 一言ずつ、かみ締めるようにキラは話す。
 キラの言葉にラクスはキラの胸にうずめていた顔を思わずあげた。
 ラクスの瞳に映ったキラは、あの日……エターナルから出撃する前に見せたそんな憂いは一片も感じさせないようなそんな力強い光が宿っていた。



 憶えていてくれた、とラクスは嬉しく思う。
 ゆっくりと悪夢から目を醒ます。



「ええ、そうでしたわね。一緒に……」



 泣いていたため、目は腫れてしまっていたけれどラクスの瞳から暗い影は消えた。
 ラクスはゆっくりとキラの顔へと顔を近づける。


 そして、その存在を確かめるようにラクスはキラへとキスをした。

 深く、強く……。

 キラもそれに応えた。



 二人で生きる未来を、一緒に……。



 約束でもあり、それは願い。



 平和を夢見て、そしてまた……戦場へと赴くのだろうか?


 夢見るだけでは、夢に終わってしまうことを知っている二人だから。

BACK

あとがきという名の言い訳。
意味わからないですよね。ええ。
思いを貫く力を、力だけにとらわれない思いを。
もちろん勝手な私の想像です(笑)
キララクに幸福あれ。
幸せな、平和な世界で夢を見られますように―。
2004/10/16