終わりと始まりに笑う君

 キラとラクスが手をとり、アスランの視界を通り過ぎていった。
 アスランは思わず目をそらして、向かうべき場所とは反対の場所へと進んだ。
 行かなくてはという思いも少しだけあったが、それ以上に胸のあたりが痛み、そしてそれとリンクするように腕の傷も疼いた。
(オレは、馬鹿だな……)
 ラクスはキラのことをなんと言っていたかを、アスランは今更になってその言葉の真意をしった。
『私、あの方好きですわ』
 アスランはその言葉の意味を違う意味に置き換えて、そして自分にとって都合の良い解釈をしていたのだ。アスランがキラを好きであるように、ラクスもまた友人として、そして彼を理解するものとしての好意の言葉だと思っていた。
(彼女はそれでも変わらず笑顔をくれていた――)
 だからこそアスランにとって、ラクスと結婚するということは実感がわかなくても、当たり前のように思えていたのだ。
 わかっていたつもりで、生きてきた。
 そう、父の事だってわかっているつもりだった。
 ラクスに訊かれるまで疑問にも思わずに、ただ父の命令だから、そうすればきっと戦争は終わるのだと信じきっていた。
 否、信じたかったのかもしれない。
 アスランは特大のため息をついた。
「何おっきなため息ついているんだ? ちゃんと来なきゃダメじゃないか」
 アスランのため息とともにカガリの声が響いた。
「カガリ……」
 カガリが来るとは思っていなかったアスランは目を見開いてカガリを見つめた。
「傷、痛いのか? ……って、痛いに決まっているよな」
「いや、大丈夫……」
「だって、お父さんに撃たれたんだろう? そう、顔に書いてある」
「オレは父を説得出切る気がしていた。どうしてそう思ったのかわからないが……でも、ダメだった……。届かなかったよ」
 父親との会話を思い出しながら、アスランは俯いた。
「諦めるなよ」
 ぽつりとカガリは呟いた。
 その声が震えている事に気がついて、アスランは顔を上げた。
 アスランの眼差しの先には、涙を堪えて笑っているカガリがいた。
「まだ、きっと大丈夫」
―諦めなければ、きっとまたその機会は巡ってくる。
 カガリは言葉には出せずに、精一杯微笑んでアスランを見つめた。
 その姿に、アスランは心を痛めた。
 どうして自分はこんなに残酷な言葉を彼女に言わせてしまったんだろう。と、後悔がアスランの心を占領する。
 震えながらも、涙を浮かべながらも、一生懸命に笑う彼女。
 いじらしいまでに必死にアスランを励まそうと、微笑むカガリ。
 どうしたらいいのかアスランにはわからなかった。けれど、そんな彼女の顔は見ていたくなくて、ただ夢中でその体を抱きしめた。
 暖かな温もりが、カガリの心と共にアスランに伝わった。
「ごめん……」
 突然のアスランの行動に、カガリは反応できずにその腕の中で固まっていた。
 そんな風に、させてしまってごめん。
 ドクン・ドクンとカガリの心臓の音が聞こえる。ぞれもずいぶん早く脈打っている事に気がついてアスランはもう一度だけ謝った。
「カガリ……」
 アスランは唇をカガリの耳へと近づけた。
 息のかかる程にアスランの唇が近づいてきて、余計にカガリの心音が早くなった。
 それに気がつきつつも、アスランは気づかない振りをしてその唇を開いた。
「ありがとう」
「わ、わかった。わかったから離してくれ〜」
 カガリは恥ずかしすぎてとうとう堪えきれずに、じたばたとアスランの腕の中でもがいた。
 アスランはくすくすと笑いながら、意地悪そうに腕の力を強めてもう一度抱きしめた。

 あんな風に笑わせないように、守らないと、な。

 アスランの心に、爽やかな風が吹いた。
 ラクスへの想いも、涼やかに心の奥へと運んで行ったようだった。
「ありがとう」
 そしてアスランはカガリを解放した。

 まだ、恋では無いけれど。

 それは、きっと何かの始まりのようにアスランは思った。

End

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後書き
まとまりの無い文章です(^^;
そして初アスカガです。
アスカガの始まりは、ラクスへの想いを絶つことからでしょう!
ということでやってみたのですが、いまいちですね…。
こんなのでゴメンナサイ(><)