光りの庭
 ぼろぼろになったキラをエターナルが収容すると、ラクスは急いでその場へと急行した。
 キラは、すぐに医務室へと運ばれていた。

「キラは……?」
 ラクスは、確認する事を少し躊躇った。
 また、彼は悲しい夢を見ているのだろうかと、そんな不安が心によぎったのだ。
「大丈夫、キラは疲れて眠っているだけだよ」
 不安そうにキラを見つめるラクスに気がついたのはアスランだった。
 アスランはラクスの肩にそっと手を置いて微笑んだ。
 アスランのその笑みに、ラクスははっとした。
 元婚約者である彼もまた、キラ同様にぼろぼろに傷ついていることに今気づいたのだ。
「アスラン……」
 ラクスはアスランの傷の状況を知ろうと、上から下までじぃっとアスランを見つめた。
「?」
 アスランはきょとんとその視線を受けていた。
「アスランも、大丈夫ですか?」
「ああ、俺は大丈夫。俺は助けてもらったから」
 アスランはそう言って、自分の後ろでキラを案じてキラの側に居たカガリの方に視線を向けた。
 その視線につられるようにラクスもカガリを見ると、噂をされているのを気がついたのかカガリもラクスを見ていた。
 二人の視線が出会うと、二人はお互いに微笑み合った。
 ラクスはそのカガリの微笑みを確認すると、キラの側へと駆け寄った。
「キラ……」
 キラは眠っていた。
 今までからは考えられないくらい、穏やかな規則正しい寝息が張り詰めていたラクスの心をゆっくりとほぐした。
「キラ」
 ラクスは眠りを妨げないかと、恐る恐るキラの頬に手を当てた。
 その手を優しく滑らせて、キラの顔を撫でた。
 その指先の視線の向こうに指輪が光るのを見た。
 それはラクスがキラに手渡した、あの指輪だった。
 少しでもキラの側に、自分という存在が在ったという事にラクスは一粒涙を零した。



「まったく、信じられないよな。さっきまであんなふうに戦っていたのに、今はこんなに穏やかに眠っているなんて」
 呆れたような物言いだったが、カガリはとても優しい笑顔を浮かべて眠るキラを見つめていた。
「疲れたんだろうな」
 アスランはそんなカガリを愛しそうに見つめて、そして友人のほうへと視線を移す。
 カガリはゆっくりとアスランにもたれかかり、アスランはカガリの頭に手を置いて優しく撫でた。
「お疲れ様、カガリ。そして、ありがとう」
 穏やかな瞳に見つめられてカガリは頬を赤く染めた。
「あ、アスランもな」
 アスランはそっとカガリの額に唇を当てた。
 カガリは一瞬驚きの表情を浮かべたが、すぐに少し物足りなさそうにアスランを見上げた。
「そんな目で見るなよ」
 アスランは苦笑いを浮かべた。
「ご、ごめん」
 アスランはカガリの手を取って、ラクスにはあえて声をかけずに医務室を後にした。
 医務室を出ると、カガリの顔をまじまじと見つめた。
「な、なんだ?」
「ありがとう」
 微笑んで、カガリの手を引いた。
 暖かな温もりを感じながら、アスランはカガリの唇に自らのそれを重ねた。

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