「父が……死にました……」
 そう言ってラクスが浮かべたのは初めて見せる涙だった。
「ラクス……」
 ラクスは心配そうな瞳を向けるキラに『大丈夫です』と笑って答えようと一生懸命気持ちを鎮めようとした。
 そんなラクスを見ていられなくなったキラは、アスランやカガリがこちらを見ていたという事を知りながらもラクス体を引き寄せた。
「悲しいときは、無理なんてしないで……泣いても良いんだ」
 キラはラクスの耳元で囁くと、その言葉でラクスの涙はとうとう大きな瞳からこぼれた。
 ラクスはキラの胸の中で気が済むだけ泣き、キラはそんなラクスを優しく抱きとめた。



「泣くつもりでは、なかったのです……」
 苦笑いを浮かべてラクスは言った。
「うん」
 キラはただ一言。しかし、その顔はとてもやさしく揺れていた。
 ラクスはキラのそんな表情を見て、頬を朱に染めた。
「ラクス?」
 キラは頬を赤く染めたラクスを不思議そうに見つめた。
 ラクスはその視線に気がついて、何事も無かったようにキラに微笑みかけた。
「……こんなところで立ち話もなんですから、私の部屋……と言っても何もないのですが、そちらへ移動しませんか?」
「え? あ、うん。そうだね」
 キラは一度だけ後ろをちらりと見遣って、カガリとアスランがもういないことを確認して頷いた。
「キラのお話を聞かせてください」
 ラクスは満面の笑みで言って、キラの腕を掴んだ。
 キラは自分の腕を掴んでいるラクスの手を外して、手を繋いだ。
 ラクスが驚いてキラのほうを見ると、ちょうどキラと視線がぶつかった。
 二人とも同じタイミングで頬を染めて、視線を外した。
 しかし、視線は外されても二人の手は繋がれたままだった。



 ラクスの部屋は何も無く、普通の船室だった。
「お好きなところに座ってください」
 そう言われてキラはソファに座り、ラクスはその隣にちょこんと座った。
 二人の間に妙な沈黙が流れた。
 先に沈黙を破ったのはラクス。
「また、こうしてキラに会えるとは思っていませんでした……」
 ぽつりと呟いた言葉。
 キラは、そんなことを言われるとは思っていなくて少しだけ驚いた。
「ラクスが守ってくれたから、だから僕はここにいるんだ」
 会えたことは当然、まるでそういうかのようにキラは言った。
 その言葉にラクスはまた涙を零した。
 それは先刻の涙とは違い、喜びの涙だった。
「大丈夫……?」
 キラはそれが先ほどと同じ涙と思い、心配そうにラクスを見つめた。
「……嬉しいのです」
「え?」
 小さな声で吐き出された言葉が信じられず、確認のように驚きの声を上げる。
「私は、あなたに……キラに会うことが出来て嬉しいのです……」
 ラクスはそう言いながらキラの胸に飛び込んだ。
「こんなにも早くキラに再会できて……嬉しい……」
「ラクス……」
 キラはラクスの体を受け止め、そしてラクスの背中に恐る恐る手を回す。
「僕も、君にあえて嬉しい」
 再会だけではなくて、始まりから。
 そういうと、初めてラクスとの出会いを思い出した。
 それは今思っても、奇跡のような瞬間だった。
「僕はたくさん君に救われた。あの絶望ともいえる宇宙の中で、君に会えた」
 ラクスの耳に届く声はとても落ち着いていた。その言葉を聞いているうちにラクスの瞳から涙は消えた。
 変わりに、驚くように瞳を見開いた。
 泣いてばかりいたキラではなくて、それは異性としてのキラがラクスの側にいた。
「それは本当に奇跡だと思った」
「キラ」
 ラクスはキラの顔を見上げる。
「でも、ラクスはアスランの……婚約者……」
 婚約者、それは悲しい響を帯びてキラの口から吐き出された。
「あのときは、私もそれで良いと……思っていました。けれど、悩み傷つき、それでも優しいキラに出会いました。キラはいつも、全てをさらけ出して私に接してくださいました」
「今思えば、たくさん恥ずかしいところを見せていたね」
 キラは苦笑いを浮かべた。
 ラクスはそんなことはありませんと、首を横に振った。
「私は正直申しまして、男性があんなふうに慟哭するのを見た事がなかったのです。ですから、とても驚きました。けれど、同時にキラともっともっとお話してみたいと思いました」
 ラクスはそう言いながらキラの顔に手を伸ばし、触れた。
「アスランとも、何度もお話をしたのですが……アスランの心には触れる事が出来なかったのです……」
 キラの頬に触れた手は、何時の間にかキラの背中へと回されていた。 
 ラクスが浮かべたのは、寂しそうな笑顔。
「ラクスは……アスランが好きだったんだね」
 キラはラクスには表情が見られないようにまた抱きしめた。
「……ええ」
 キラの胸に顔を当てて、ラクスは少し間を置いて答えた。
「でも、それは……」
「良いんだ、別に……。ラクスとアスランのことよりも、今こうして君が、僕の側に居てくれる、それだけで……」
「キラ……。私も、あなたの側にいたい……ですから、絶対に死なないで……帰ってきてください……」
 二人の視線は絡まり、そして二人の想いと、唇は重ねられた。

End...?


後書き
なんだこりゃー!!(自爆・自滅)
何か脈絡がなくてゴメンナサイ。
最近ずっとこういったの書いていなかったので……。
とにかくキララクです。
私の中で42話こそキララクの始まりですv
後半のキラがあまりにも砂吐きなセリフを言っているのですが、
自分で書いていてダメージ食らったらダメですよね(−−;

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