夏の誓い
「本物の海ですのね」
「うん」
プラントにずっと居たラクスにとって、地球の母なる海は憧れだった。
今日はたくさんの仲間達と海へ遊びに来ていて、今はキラに誘われて夕日を見にきていたのだ。
朱色に染まる海を見つめながら、何を話すというわけでなくただ二人で海からの風を受けながら美しい自然の芸術を見つめていた。
「ラクスにどうしても、見せてあげたくて」
「まぁ、嬉しいですわ。ありがとう、キラ」
本当に嬉しそうに微笑むラクスに、キラは頬を赤く染めた。
ラクスはキラの様子には気づかず、自分の頭をキラの肩へと預けた。
「本当に、綺麗だな……」
キラは、ぽつりと言葉を洩らした。
「ええ、そうですわね」
「夕日じゃなくて、ラクスが……」
「まぁ」
ラクスは照れ笑いを浮かべながらも、嬉しそうにキラを見つめた。
「ありがとう」
キラも照れていたが、夕日の朱色がそれを見事に隠してしまっていた。
ラクスは本当に嬉しそうに微笑んでいた。
それが嬉しくてキラも笑った。
「そうだ、目を瞑って、手を出して」
キラは何かを思いついたように、ラクスに言った。ラクスはきょとんとしてキラの方へ視線を向けた。
「??」
「いいから、ね?」
いまいち良くわかっていないラクスを促すようにキラは笑みを浮かべた。
ラクスは腑に落ちていなかったがその笑顔に促されるままに、目を瞑った。
ラクスが完全に見ていないことを確認すると、キラは隠し持っていたあるものを出した。
そして、それをそっとラクスの手のひらに乗せた。
その姿に満足したキラは、ふっと笑みを零してラクスを見つめた。
「何をくださいましたの?」
タイミングを見計らっていたラクスは、空気が少しゆるんだ事を感じてゆっくりと瞳を開けた。
すると、ラクスの手の中には薄い桃色の巻き貝がおいてあった。
「これは?」
「海で拾ったんだ。なんだか、この貝を見ていたら君を思い出したから……だからあげようと思って」
「ありがとう、本当に可愛らしい貝さんですわ」
満足そうにラクスは微笑んで、それをそっと包み込んだ。
「あ、待って」
貝をしまおうとしたラクスをキラは止めた。
「え?」
「巻き貝を耳にあてると、波の音がするんだよ」
「まぁ、本当ですか?」
「うん。今は本物の波があるから、わからないかもしれないけれど……」
「そうですわね……。では、この貝殻さんを耳に当てたら……いつでもこの海へと来られるのですね。嬉しいですわ」
本当に嬉しそうにラクスは微笑んだ。
「あ、あと……」
キラは何かを言いたそうにしながらも、はっきりせずに視線を泳がせた。
「何ですか??」
その視線を追うように、ラクスは顔を動かした。
逸らしたつもりが、どんなに逃げても逃げても結局はラクスのアイスブルーの瞳に捉えられてしまい、キラはとうとう観念したようにため息をついた。
「また、目を瞑ってもらっても良い?」
「またですか?」
ラクスは悪戯な笑みを浮かべてキラを見た。
「……じゃあ、そのまま……」
キラは呼吸を整えるように深く呼吸をして、胸に手を当てた。
そして、ゆっくりとポケットから小さなものを取り出した。
夕日に輝いたそれをみて、ラクスも驚いた。
「良い?」
こくりとラクスは頷き、そして左手をキラに差し出した。
キラはそれを優しく受け取ると、薬指にシルバーで出来た指輪をはめた。
それは驚くくらいにぴったりのサイズで、ラクスはまさかの出来事に涙を浮かべて喜んだ。
「今はこれくらいのものしか君にプレゼントできないけど……いつか……いつか……」
口ごもって、止まる。
ラクスは真っ直ぐとキラを見つめて、後の言葉を待った。
キラは突然ラクスの手を掴んで、自分の方へと引き寄せた。
ラクスの耳元へ唇をやると、ラクスにしか聞こえないほどの声で囁いた。
その囁きに答えるように、ラクスはキラの背中へと手をまわした。
「ありがとう……」
ラクスの瞳からは大粒の涙がたくさん零れ落ちてキラの胸を濡らした。
キラは恥ずかしさを堪えながら、ラクスの頭を優しく撫でた。
そんな二人を見ていたのは沈みかけの太陽と、昇りたての月だけだった。
End
後書き
あまりにも途中のキラがベタ過ぎて自分でも呆れました(^^;
アニメとはちょっと違う時間の話を書くのは想像力も、文章力も足りない私には辛かったです〜。