清き魂の旋律
もうだめだ、と誰しもが思った。
その瞬間、奇跡は起きた。
「……」
マリューは言葉もなく、目の前で起きている光景を見ていることしか出来なかった。
ドミニオンより放たれた熱は、アークエンジェルではなく負傷して帰ってきたはずのストライクへと浴びせられていた。
機体が少しずつ形を失い、そして最後に大きな爆発と共に宇宙へと消えた。
それは信じがたい現実だった。
触れ合った唇の温もりが、遠ざかる――。
たくさんの思い出が、彼の笑顔がフラッシュバックする。
「……ムゥーーーーー!!」
愛しい人の名前を叫び、それを奪ったドミニオンを見据えた。
その瞳には今にも零れそうなほど涙を溜めて。
アークエンジェルへと放たれたそれは、何者かによって遮られた。
それを見て、ナタルはしてやったりと微笑んだ。
「貴方の負けです」
淡々と紡がれる言葉に、アズラエルは怒りのままにナタルの足を撃った。
「っう……」
激痛が走る。
痛みが、より一層思考を高めているのにナタルは気がついた。
それがおかしくて少し笑った。
目の前に居る、あの男は何故こんなにもプラントを落としたいのか。
それは確かに戦争を終えるかもしれない。
しかし、それと同時にあの脅威の武器が地球へと降り注ぎ、ナチュラルもまた滅びるだろう。
(おかしなもんだな……)
戦争を終わらせるために戦っていたのに、それは何時の間にか誰かを、そして自らを滅ぼすようになっていたなんて馬鹿げている。
ナタルはそう思いながらアークエンジェルのクルーを、マリューを思い出した。
もう一度、話をしてみたかった。
それは戦争とは関係のないところで……友人として。
叶わない望みだと、ナタルはまた自嘲した。
覚悟はとうに決めた――。
「うてぇぇぇ!!!! マリュー・ラミアス!!!!」
それはすべての願いを込めた言葉。
その言葉に導かれるように、アークエンジェルから砲火が放たれた。
清浄の光が、自分を包むように思えてナタルは穏やかに微笑んだ。
その瞳は閉じられることなく、真っ直ぐとアークエンジェルを見つめていた。
ドミニオンはその形を失った。
End
後書き
あまり細かくは書きませんでしたが、すごくナタルが書きたくなって書きました。
ナタルさん〜〜!!ムゥ〜〜!!!
題名にセンスのなさが光ってます(自爆)
んでもって、文章力の無さも露出(いつもだけど)