Happy Birthday





 イザークはキラに提案された通り、パーティーをする事にした。
 キラは、というと忙しいので、全てをイザークに一任した。
 当日、駆けつける。というのがイザークが請け負う際に、キラに出した条件だった。
「絶対に来いよな」
 イザークはキラに念を押した。
 キラは笑顔で答えた。


 しかし、イザークは困っていた。
 誕生日パーティーなんて、何をして良いのか浮かばない。
 いくらラスクの為と言えども、イザークにもやるべきことがある。仕事と兼ねてやるには、少しきつかった。
 しかし、弱音を吐いている場合じゃないと首を振り、改めてパーティーの内容を考えはじめた。

『ラクスには内緒で』
 と、キラと決めた手前、仕事をしないで怪しまれるわけにはいかない。
 ラクスは勘が良いので、気を抜くとすぐにバレてしまうであろうことは、考えなくてもわかる。
 イザークは顔色は変えずに、心の中で盛大な溜め息をついた。
 それでも、いつも頑張ってくれている議長のために頑張るか。と、気持ちを入れ替えた。
 とりあえずイザークは、他の人間にも声をかけてみることにした。




場所は変わり、オーブのキラは――。


 イザークからの通信を切ると、キラはラクスを思った。
 ラクスなら、とても喜んでくれるだろうと。それで少しでも気分転換になれば良いな、とキラは思った。
 それにはまず、仕事を終わらせないといけないのだ。
 ふと机に視線をやると机の上の書類の山が目についた。
 それを見て、 終わるかな?と首を小さく捻った。
「…キラ様?」
 書類の山を見てぼーっとしていたキラを呼ぶ声が耳に届いた。
 キラはその声で我に戻った。
「ごめんごめん」
「どうかしましたか?」
 少女は心配そうな視線をキラに向けていた。
「大丈夫、ちょっと考え事をしてただけだよ」
 キラは少女に笑顔を浮かべて答えた。
「何かあったら手伝いますよ? それが私の仕事ですから」
 少女は相変わらず、藍色の瞳で、心配そうにキラを見つめていた。
「リーアは心配性だね」
 キラがクスリと笑うと、少女はわざとらしく大きな溜め息をついた。
「…キラ様がなんでも一人で背負いこむからです。補佐する為にいるのですからね?」
 リーアは腰に手をあてて、キラに詰め寄る勢いで話した。
「で、ラクス様のことですか?」
 リーアはニヤリッ、と言う表現が一番正しい笑みを浮かべた。
「リーアはなんでもお見通しだよね」
 キラは微苦笑を浮かべて、イザークのこと、ラクスのことを説明した。


「2月5日って、もうすぐじゃないですか……!」

 リーアは話を聞いて声を上げた。

「そうなんだよ」
「で……アレ、終わるんですか?」

 苦笑いを浮かべながらリーアはキラの机の書類の山を指差した。

「そう、それは今僕も思っていたんだ」
 キラがそう答えると、明らかにリーアの身体から力が抜けるのがわかった。
「……優秀な補佐の人が、きっと助けてくれると思うんだけどな」
 にっこりと、リーアに満面の笑みを浮かべた。

「……やりますよ。ええ、キラ様とラクス様のためなら。でも、キラ様もやってくださいよ?」

 半ばやけくそになりながら、リーアは答えた。

「もちろん僕もやるよ」

 そんなわけで、二人がかりで書類の山に挑む事になった。
 やる気をみなぎらせて自分が片付けられそうな分量を取りに行っていたリーアに、キラは気まずそうに呟いた。

「今度の会議で使う資料も作らなきゃ、いけないんだ」

 作業に入ろうとしていたリーアは、持っていた書類をバサバサと地面に落とした。
 その表情はキラからは確認できない。が、きっとものすごい顔をしているのだろうと、キラは思った。

「今度の会議って……」
「そう、ラクスの誕生日の次の日の……」

 リーアはがっくりとうなだれる。
 しかし、次の瞬間大きく息を吐いてしゃきっと立ち上がる。

「やるしかないですよね。頑張りましょう」

 リーアはてきぱきと書類を広い始めた。
 キラはそんなリーアにつられるように、書類に手を伸ばした。



 ラクスの誕生日まであと少し――。




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